一部の柘榴石が時折見せる鉱物の形状である。
柘榴石はいわゆるガーネットのことで、
様々な組み合わせの組成があり、
結晶の形も多様だ。
その中でもトラペゾヘドロンとは
偏方二十四面体と呼ばれるもので、
ひしゃげた四角形が組み合わさり、
角ばった球体に近い形をとるものである。
二十四面ダイスを思い起こしてみてほしい。
ああいった形の結晶である。
ただし、トラペゾヘドロンという語が指す形は
数学と結晶学で異なるものとなっている。
数学ではねじれ双角錐というまったく違う
形状の立体となる。
数学者や鉱物学者以外がトラペゾヘドロンと
言う場合、おそらく輝くトラペソヘドロンと
呼ばれる物質を指すことがほとんどだろう。
輝くトラペゾヘドロンとして知られる物質は、
ほぼ球形の多面体と形容される。
つまり前述の二十四面体の形をとる。
地色は黒なのだが、
輝くという形容の通り光を放っている。
発光の由来は未だ特定されていない。
なお、トラペゾヘドロンと呼ばれてはいるが、
二十四面と確認されたわけではないため、
球に近い多面体という意味で
便宜上使われた語である可能性がある。
実物を目にした者が少ないため、
残念ながらこの辺りがはっきりとしない。
面が一様ではなく冒涜的な角度である可能性もある。
太陽系外縁軌道上の惑星において
生成されたものが地球にもたらされたとされ、
地球上の物質ではないと言われているが、
該当する惑星は発見されておらず伝説の域を出ない。
常に光に晒しておかなければ恐ろしいことが
起こるという伝承もあるが、
この話が書かれた文献はいずれも支離滅裂であり、
狂人の戯言としか思えないため、単なる迷信だろう。
近代にアメリカ東部の星の智慧派教会が
所有していたのが最後に確認された行方で、
その後誰の所有となりどこにあるのかは不明である。
個人に死蔵され研究の進まない物品というものは
ままあるが、輝くトラペゾヘドロンも
そうしたもののひとつとなっているかもしれない。
問題は、この物質が唯一無二の品なのかということだ。
いくつかの目撃例が同一のものなのか、
それとも複数あるうちのひとつなのか、
それすらも判然としていない。
いずれにせよ希少な品であることに違いない。
もし、蔵の奥に眠っているようなことがあれば、
しかるべき研究機関に持ち込むことをお勧めする。