松毬状の花に似た部位をつける
西洋唐花草とも呼ばれる植物である。
毬花と呼ばれる花に似た部位は、
爽やかな香りと独特の苦みを持ち、
ビールの醸造に欠かせない。
殺菌作用があるため、醸造過程で
入り込む雑菌を排除する効果があるのだ。
古くはバビロニアで野生のホップが
ビール醸造に使われ、
エジプトでも薬草とされていた。
その後ヨーロッパではビールといえば
様々な香草薬草を利用したものが
醸造されていたが、やがてホップが主流となる。
殺菌作用によるビールの日持ちの良さが
特に注目されたためだ。
イングランドでは毒があるという誤った認識が
広まり、一時は使用が禁止された。
一方、バイエルンにおいては
ビール純粋令という法律が制定された。
これはビールには大麦とホップと水以外を
原料に用いてはならないというものである。
当時はホップが主流とはいえ様々な香草が
ビールに使われており、中には悪質な
業者によって毒性のある植物が使われる例もあった。
また、小麦やライ麦といった主食となる
穀物をビール造りに費やされると
食糧価格が上がってしまうため、
これを規制したものとされている。
なお、宮廷醸造所や許可を受けた修道院では
小麦を使うことが許されていたため、
小麦ビール、いわゆるヴァイツェンは
貴族のビールとして存続した。
バイエルンのビールへの情熱はすさまじく、
ドイツ帝国統一の際には、バイエルンが
帝国に加わる条件として、ビール純粋令の
全土への適用を求めたという。
この時期にピルスナーがドイツで
作られるようになったため、
大麦とホップと水だけのピルスナーが
いわゆるビールの代表となったのだ。
ビール純粋令には小麦やライ麦を使う場合は
上面発酵しなければならない、
つまりラガーを醸造してはならないなど
他にも細かな決まりが存在する。
ホップといえば、イングランドがインド植民地に
ビールを送る際に、赤道を二回通過することで、
多くのビールが腐って駄目になってしまった。
そこで、アルコールの度数を上げ、
ホップを多く使用することで、
腐りにくいインディアペールエールを生み出した。
アイピーエーというやつである。
ダブルアイピーエーというものもある。
これはインペリアルインディアペールエールだ。
何故インペリアルかというと少々長くなる。
その昔イングランドはスタウト、
つまり簡単に言えば黒ビールを、
ロシア帝国に輸出していた。
ロシアではアルコール度数と味の濃いものが好まれ、
強いスタウトが生み出され、帝国輸出用として
インペリアルスタウトと呼ばれた。
その結果、強いビールを更に強くしたものに
インペリアルを冠するようになり、
インペリアルアイピーエーが生まれた。
アイがふたつ重なるのでダブルアイピーエーなのだ。
なお、冷蔵技術が生み出され
本来のアイピーエーは必要なくなったのだが、
アメリカ人がこの味を非常に好み、
自国でアイピーエーを作るようになった。
ニューイングランドアイピーエーなどと
呼ばれるものや、本末転倒なのだが
度数を低く抑えたセッションアイピーエー
などが生まれることになる。
おっと、いけない。
ホップの記事であった。
ビールについてはこの辺にしておこう。
世界的に見るとホップの生産はドイツと
アメリカとエチオピアが半分以上を占め、
チャイナやノースコリアでも生産されている。
本邦では北海道と一部の東北地方でのみ
ホップ生産が行われている。
品種と産地で香りや苦味に差があることから、
前述のアイピーエーでは
どんなホップを使ったかが重要となる。
国産ピルスナーしか知らないよ、
というのであれば、悪いことは言わない、
様々なエールを飲んでビールの
奥深さを知ってほしい。