夕暮れや夜明け前に鳴く小鳥である。
体の背側は灰色がかった茶色、
腹側は黄色がかった白で、
尾は赤みを帯びている。
生息地は地中海周辺から中央アジアまでで、
本邦ではその鳴き声を聞くことができない。
このため、ナイチンゲールの名から訳し、
小夜啼鳥、サヨナキドリという和名が付けられた。
西洋のウグイスとも称えられるため、
夜鳴鶯の呼び名もある。
夕暮れ時に美しい声で鳴くその様を、
死者を悼む歌になぞらえて、
墓場鳥と呼ばれることもあるが、
この名だけを聞くと違った印象を受けるだろう。
古くはギリシア神話や中世の詩人、
シェイクスピアもその鳴き声を称揚しているが、
中でも白眉なのはアンデルセンの童話だろう。
ヨーロッパでは、みにくいアヒルの子と
並んで有名な童話だが、本邦では馴染みが無い。
タイトルはそのまま小夜啼鳥である。
童話の舞台はチャイナである。
皇帝がナイチンゲールの鳴き声に感涙し、
歌手にとってその涙は何物にも代えがたい
宝石であると小鳥は喜ぶ。
その恩返しとして、小鳥は皇帝に憑りついた
死神を歌によって退散させるという話だ。
前述のように東アジアにナイチンゲールは
いないのだが、この童話の影響で
チャイナには素晴らしいナイチンゲールが
いると思っているヨーロッパ人は多いだろう。
話は逸れるがこの童話、
物語の構成上の転機が三度あるのだが、
そのうち二回は本邦が関わってくる。
日本の皇帝からの贈り物が
中国の皇帝の宮殿において
ナイチンゲール騒動を引き起こすのだ。
おまけに本物より素晴らしい
宝石細工の小夜啼鳥というものが登場する。
本邦で作られたそうだが、
この童話が書かれた時期にはまだ
ジャポニズムは興っていなかったはずだ。
シノワズリ真っ只中に、
極東の島国に着目して語るあたり、
アンデルセンはやはりただ者ではない。
さて、童話小夜啼鳥、
これは本当に面白い話である。
青空文庫で読むこともできるので
ぜひ一読することをお勧めする。
ぺ。