序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年1月7日月曜日

紫苑

中心が黄色く外側が紫色の花を咲かせる野の草である。

今昔物語に載っている
母を亡くした兄弟の物語に紫苑は登場する。

兄弟共に嘆き悲しみ、毎日墓参りを欠かさなかったのだが、
兄は宮仕えの身であったため、悲しみを忘れさせるとされる
忘れ草を墓前に植えて母への想いと決別した。

しかし、弟は思い草とも呼ばれる紫苑を植え、
毎日欠かさず墓参りを行った。

そんなある日、彼に墓守鬼が語り掛ける。
自分は醜い鬼だが、お前の母を想う心に感じ入ったと。

以来、鬼は彼に毎晩予知夢を見せ、
事実上の予知能力を与えたのだった。

この物語が、君を忘れないという花言葉の由来だという。
鬼の醜草という別名もこの物語に因む。

花の咲くのは秋である。
ちょうど中秋の名月の頃に咲くため、
旧暦で満月となる十五夜にちなみ十五夜草とも呼ばれる。

根には利尿作用があり、紫苑の名で生薬とされる。
食用にはならないが、発熱や膀胱炎に効果が期待できる。

なお、英語ではタターリアンアスターとなる。
アスターとは星を意味し、花の形から名付けられたものだ。
この紫の紫苑はその中でも東方からもたらされたものとして、
タタール人のアスターと呼ばれている。

ちなみに本邦の野生の紫苑は絶滅危惧種である。
園芸品種は人気があり各地で栽培されているため
絶滅という言葉はぴんとこないが、
自生しているものは九州のごく一部にしか存在しない。

死者を忘れず想い続ける花、紫苑。

ゲーム、ポケットモンスターの初代をプレイしたことが
あるならばシオンタウンという町の名前の元だと
聞けばなるほどと思うだろう。