冬に花を付ける樹木である。
艶葉樹、つやばきの名が訛り、
ツバキとなったと言われている。
成長は遅く、寿命の長い木で、概ね人の背丈の
三倍程度だが、長く育てば大木にもなる。
花は中心が黄色く、通常は赤い花弁を持つ。
雪の中に咲いているとひと際目を引くだろう。
木偏に春と書いて椿のため、
春の花ではあるが、正月を新春と呼ぶように、
春の定義には揺らぎがある。
なお、椿という漢字は本来大陸の別の植物を
指す文字であるが、本邦ではこのツバキを指す。
国字として創作した文字が偶然実在する字に
なったとも、訳者が勘違いしたとも、
本意を無視したのではないかとも言われている。
花は萎れていくのではなく、ぼとりと
落ちることも印象的で、映像作品では
抽象表現として用いられることもある。
江戸時代からの園芸植物であり、
本邦では実に様々な品種が生み出された。
白い斑のあるもの、縁が白いもの、
八重咲のものなど様々ある上に、
白斑にも星斑などの種類があり、
八重咲にも蓮華咲きや宝珠咲きなどがある。
つまり、数え切れぬほどの園芸品種が存在し、
地方によって更に傾向が異なる。
万葉集にも歌われるほど古くから
親しまれてきた花だが、ヨーロッパへは
エンゲルベルト・ケンペルが紹介した。
実際にヨーロッパに伝えたのはカメルという名の
助修道士で、彼の名にちなんでカメリアと
呼ばれるようになる。
ヨーロッパでも園芸品種として
愛されるようになり、小説と歌劇で知られる
椿姫の流行も椿の人気を物語る。
さて、椿は鑑賞だけに用いられる植物ではない。
木材、椿油、生薬と様々な用途がある。
成長が遅いことは前述したが、
昔は大木が沢山存在したため、
安価な木材として利用されていた。
しかし、伐採され尽くされ、現在では
椿の大木は屋久島ぐらいでしか見ることができない。
ちなみに椿材は印鑑や将棋の駒によく使われる。
椿油はオリーブオイルに例えられるほど
様々な用途に利用できる。
整髪、燃料、食用と、何に使っても良い。
なお、油を搾った残りかす、油粕は
魚介類には毒性があるため、
川での毒もみ漁に使われていた。
工芸品や絵の題材としてもよく取り上げられ、
漆や螺鈿の匠の品は数知れない。
特に茶の湯での椿の地位は
茶花の女王とまで言われるほどだ。
まだまだ紹介しきれないが、椿は本邦古来より
身近に存在してきた美しい植物である。
他にも様々な文化が存在する。
ヨーロッパ人も、そうした背景を含めて
カメリア・ジャポニカに魅了されたのかもしれない。