序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年1月14日月曜日

雪虫

アブラムシの仲間は植物から
吸った成分の一部を体外に排出する。

糖分を排出するものはアリマキと呼ばれ
蟻に食料提供をすることで守ってもらう。

蝋を排出するものは人に飼われ、
ワックスや染料の生産元となる。

中には排出した蝋を綿毛のように体に
纏うものがおり、これが雪虫と呼ばれる。

飛行能力が低いため容易に風に煽られるのだが、
この姿が余計に雪らしく見え、
雪虫とはよく名付けたものだと思わされる。

北海道では初雪の到来を告げる虫として
親しまれており、雪虫が飛ぶと
冬がやってくることを実感するという。

人形浄瑠璃、恋娘昔八丈という話があり、
登場人物に白子屋お駒という女性がいる。

昼ドラのような話が進行し、
お駒が夫殺しの罪で処刑されそうになったところで
どんでん返しの大団円となるのだが、
物語の元となった白子屋お熊は刑死している。

お熊は浄瑠璃と異なり不義密通のうえ、
思い人と結婚するために夫を殺害しようと
したのだが、絶世の美女として評判であった。

刑場へ引き立てられるお熊の美貌を一目見ようと
人々が集まったのだが、その時のお熊の格好が、
黄八丈の小袖に白無垢を被り、
水晶の数珠を掛けていたという。

このパフォーマンスは各地で話題になり、
多くの記録が残されている。

さて、なぜ雪虫の話で白子屋お駒が
出てくるのかというと、この虫のことを
京都では白子屋お駒はんと呼ぶらしいのだ。

もっとも、京都出身者何人かにたずねてみたが、
みな知らないと言っていた。

そもそも白子屋事件は江戸の事件である。
どうして京都でだけその名で呼ばれるのか
という疑問もある。

群れになって飛んでいる様は
本当に雪が降るようで幻想的なのだが、
彼らの蝋は利用価値が無いので害虫の類である。