序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年1月16日水曜日

オウギワシ

白と黒の羽を持つ巨大な猛禽である。

体の大きさは幼児ほどもあり、
羽を広げた横の長さは
成人男性の身長よりもある。

体重は西瓜ふたつ分ほどだ。
更に西瓜ひとつ分ほどの重さの獲物を
掴んだまま飛ぶことが可能である。
よく飛べるものだと感心する。

爪の長さは成人男性の指の長さを超え、
握力は人の頭蓋骨を爪で貫けるほどである。

樹上の猿やナマケモノを襲い巣まで運ぶ。
彼らにとっては死神も同然だ。

小回りも利き、鬱蒼と生い茂る密林の中を
自動車並みの速度で木々を避けながら飛ぶ。

最高速度で襲い掛かる際の爪の威力は
ライフルの銃弾よりもはるかに強力だという。
拳銃ではない、ライフルである。

ちなみに、頭にある冠羽と呼ばれる黒い羽が
扇状のためオウギワシと呼ばれる。

正面から見ると顔が丸く、愛らしいのだが、
これは密林の猿の鳴き声を集音するための構造だ。

英語ではハーピーイーグルと呼ばれている。
ハーピーとはギリシア神話のハルピュイアのことだ。
おそらく英語読みのハーピーの方が有名だと思うが。

ハルピュイアは顔から胸までが人間の女性、
残りが鳥という怪物だが、
このオウギワシも体が大きなものは雌である。

疾風のアエロー、速く飛ぶ者オーキュペテー、
黒雲のケライノー、足の速い者ポダルゲー、
ハルピュイアの姉妹の名だ。
せっかくなので紹介しておく。

ハルピュイアは食欲の権化である。
食糧を見つければ必ず喰らいに飛んでくる。

その食べ方は汚く、多くの残飯を残す上に、
食べきれない分には糞を振り掛け
台無しにして飛び去って行く。

迷惑この上ない存在だが、
実は主神である雷神の配下であり、
彼が罰を下すと決めた者の元へと送り込まれる。
余計にたちが悪い。

そんな伝説の怪物と比べればオウギワシは上品だ。
獲物となる猿やイグアナにとっては
架空の魔物より恐ろしいと思うが。

オウギワシに天敵はいない。
このため、数が増えすぎれば
仲間内で争うことになるため、
進化の結果繁殖力は控えめである。

だが、人間がその文明の範囲を広げた結果、
控えめな繁殖力が仇となった。
オウギワシは絶滅危惧種である。

主な原因は森林破壊だが、
密猟による被害も後を絶たない。
残念なことだ。