序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年1月10日木曜日

芙蓉

葵の仲間の植物のことで、美しい花を咲かせる。
ハイビスカスの一種でもある。

芙蓉とは元々蓮の花を指す言葉である。
芙も蓉も蓮を意味する漢字なのだ。

だが、次第にハスは蓮と呼ばれるようになり、
芙蓉の名は蓮の美しさを形容する言葉となった。

美しい樹という意味でネムノキが芙蓉樹と呼ばれ、
美しい鳥だということで金糸雀が芙蓉鳥となった。

この使い方が大陸から本邦へと伝わり、
美しいこの花の名前となった。

富士山のことを芙蓉峰と呼ぶことがあるが、
現代ではほぼ使われない。

芙蓉の花が元々大和言葉で何と
呼ばれていたのかは寡聞にして知らない。
葵と区別していなかったのかもしれない。

芙蓉がこの花の名前として使われる中、
大陸の文献では明らかに蓮と分かる花を
芙蓉と呼んでいるという齟齬が生じる。

ここで逆転現象が発生し、蓮の美称として
芙蓉と呼ぶこともあるということになった。
おおらかである。

なお、蓮を意味する芙蓉と混同しそうな場合には
木芙蓉と呼ばれることがある。
逆に蓮を水芙蓉と呼ぶこともある。

ローズマロウという北アメリカ原産の花があるのだが、
これは芙蓉に近い植物で、アメリカフヨウという。
草芙蓉という呼び方がある。

酔芙蓉という園芸品種があるのだが、
これがまた面白い。

白い花を朝に咲かせるのだが、
酒に酔って顔が赤くなるように徐々に色がつく。
江戸の人々は本当に洒脱である。

芙蓉の花は一日しか咲かない。
それを交配させ、様々な品種を作り出すことに
血道を上げた人々がいるのだ。

本邦の人々は何かにこだわると
とことんまでこだわる傾向にあるが、
ここにもその片鱗が見える。

一朝一夕で成ることではないのだ。