序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年1月9日水曜日

ナズナ

ぺんぺん草の名で知られる春の七草のひとつである。

名前の由来には諸説あるが、
夏に枯れる夏無が転訛したものだという。

果実、といっても葉っぱのように見えるのだが、
特徴的な形をしたそれは三味線のバチに例えられる。

このため、三味線草の名を持ち、
三味線の音になぞらえて
ぺんぺん草と呼ばれるのである。

ぺんぺん草といえば、子供の遊び道具でもある。
私も幼少の時分にぺんぺんさせて遊んだが、
この表現で何をどうしたのか
今の若者は理解できるのだろうか。

ちなみに、英語では飼いの財布と呼ばれる。
果実が羊の皮を束ねて紐で縛った形に見えるためだ。

ナズナは初春すなわち正月に成長を始めるのだが、
これが春の七草として食卓に上る。

大和本草という書物によると、宋代の詩人が
天は世捨て人のためにこれを生じさせたと
歌っていると紹介し、味が良いためとしている。

冬季に食べることのできる植物は貴重であり、
味の良し悪しに関わらずありがたいものだった。

現在では雑草扱いだが、実際に元々雑草扱いである。
というのも、の栽培技術が本邦に伝わった際に、
麦に混じってやってきた植物であるためだ。
麦畑に勝手に生えてくる雑草だったのだ。

雑草中の雑草たる由縁として、
荒れ果てた土地でも逞しく生えてくる
という点が挙げられる。

このことから、ぺんぺん草が生えるという、
荒れ果てているという意味の慣用句が存在する。

おそらくは麦畑の手入れがされていない
ことからきた言葉だろう。

この慣用句は現在ではほぼ使われないが、
ぺんぺん草ですら生えないという
更に酷い状態を指す慣用句は辛うじて生き残っている。

食べられる草だが、あくまで雑草であり、薬効は無い。
しかし、民間療法によっては非常に優れた
薬草とされることもある。

様々な内臓の病に効くとされ、
黒焼きなどが作られたが、
単なる雑草なのでプラシーボ効果しかない。

虫除けになると信じられていた時代もあるが、
ただの雑草なのでやはりそんな効果も無い。

雑草雑草と雑草を連呼したが、
昭和帝は雑草を刈りましたという報告に対し、
草にはすべて名前がある、雑草ということはない、
という旨の言葉を残したとされる。

ここから、雑草などという草はない、
という名言が後世に伝えられている。
覚悟が完了しているのだ。