序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年3月19日火曜日

アリマキ

いわゆるアブラムシである。

蟻牧と書く。
牧とは家畜を飼育することである。

蟻が飼育されているのかアブラムシが
飼育されているのかは不明だが、
蟻とアリマキはそういう関係にある。

アリマキは硬い甲殻も鋭い顎も、
敵を刺す針も、鎌も鋏も羽も無い。
もちろん毒も無い。

ただ、植物の茎に尖った口を刺し、
液を吸い続ける生き物だ。

吸った植物の汁は体内の微生物によって
分解され、糖分となる。

しかし、ゴマ粒大の大きさのアリマキに、
生産されるエネルギー量は多すぎる。

余計な糖分は尻からひり出されるのだが、
これを蟻がいただくことになっている。

蟻はこの食料源を守るため、
アリマキの天敵が近寄ると、
自分たちの巣が攻撃されたかのように
果敢に戦いを挑み撃退する。

つまり、アリマキにしてみれば、
蟻に餌をやって守ってもらっているのだ。

蟻にしてみれば、守ってやる代わりに
甘露をいただくというわけだ。

牧とは言っても、
どちらが飼っているのかわからない。
こういう関係を共生という。

さて、アリマキの力はそれだけではない。
繁殖力が凄まじいのだ。

アリマキには基本的には雌しかいない。
一匹の雌が、自分と同じ遺伝子を持つ
娘たちを大量に生む。

驚くべきは、この子供たちは卵の中に
いるうちから既に自分が産む卵を育んでいる。

ゆえに、たった一匹が爆発的に増える。
植物にびっしりと付いたアリマキを
見たことがあるのではないだろうか。
とても気持ち悪い。

一か所に大量に固まって生息している
何の戦闘力も無いこの虫を捕食する虫は多い。

代表的なものはテントウ虫だろう。
それはもう、食べ放題状態で、
もりもりと食べていく。

それでも壊滅しないほど
アリマキの繁殖力は強いし、
蟻というボディガードもいる。

そんなアリマキも冬が近づくと特別な卵を産む。
雄が生まれる卵だ。

雄には羽があり、他の植物の茎へと飛んでいく。
そこで雌と出会い、新たな遺伝子を生み出すのだ。

種類によっては糖分ではなくワックスをひり出す。
これは蟻ではなく人が大喜びする物質だ。

ワックスや染料を生産するカイガラムシは
人間によって飼われることになる。

また、蟻のように兵隊を生み出す種類もいる。
食事も繁殖もせずに外敵と
戦うだけの個体が育つのだ。

なかなか興味深い昆虫である。
ただし、気持ち悪い。

ちなみに、アリマキはカメムシと近い種類だ。
気持ち悪さを助長する情報である。