ナイル川下流のデルタ、扇の要に位置する
エジプトの首都アル・カーヒラ。
本邦では英語読みのカイロとして知られる。
下ナイルと上ナイルの境界にも位置する
要地だが、エジプト王朝時代には
小さな集落しか存在しなかった。
イスラム帝国がエジプトを攻略した後、
軍営都市としてこの地にフスタートという
街が建設された。
イスラム帝国では軍隊は既存の街には
駐留させず、新たな都市を
建設するのが恒例である。
軍人相手の商売は儲かるため、
こうした軍営都市には商人が集まり
多くの場合、商業都市へと発展を遂げる。
フスタートもこの例に漏れず、
下エジプトと上エジプトの中継地として、
大いに栄えることになる。
カーヒラはファーティマ朝の将軍が、
エジプトに勝利した記念として
築いたフスタート北部の新都市である。
名前の意味は文字通り勝利の都市だ。
なお、当時はカーヒラとフスタートは
繋がっておらず、別の都市として存在した。
商業都市フスタートは隆盛を極めたが、
十字軍の侵攻を受けた際に、
焦土作戦がとられ、焼き払われた。
以来、フスタートが有していた機能は
カーヒラが受け継ぎ、
この街はエジプトの中心であり続ける。
アラビア語圏最大の都市であり、
文化の中心として繁栄を続けているが、
現在は人口過剰による諸問題が噴出している。
例えば、カーヒラで消費される電力量は
近隣の発電所の能力を超えており、
定期的に停電が発生する。
常態化した問題の解決のために、
エジプト政府は遷都を計画しているという。
遷都といっても、別の街に首都機能を
移すわけではなく、カーヒラ東部に
新都市部を形成するつもりらしい。
本邦で例えるなら、
茨城に新東京を作るようなものである。
なお、西にはピラミッドで有名なギーザ、
南にはエジプト王朝時代の中心都市
メンフィスがあり、北部は既に
新市街が拡張されて久しい。
ちなみに、我々はかの国をエジプトと呼ぶが、
これは英語での呼び方である。
かつてギリシア人はこの地を
アイギュプトスと呼び、
サラセン人は軍営都市を意味するミスルと呼んだ。
軍営都市、ミスルはフスタートのことで、
カーヒラに継承され、カーヒラが
アイギュプトスの首都として機能し続けたことで
地域全体の呼び名となる。
アラビア語圏ではエジプトは
ミスルと呼ばれており、エジプト人も自国を
ミスルと認識している。
イスラム教徒やコプト系キリスト教徒にとって、
アイギュプトスとは遥か昔の
異教の国でしかないのだろう。