序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年3月18日月曜日

ミツバアリ

見掛けることのまずない蟻である。

何故かと言うと巣から出ないからだ。
巣から出ないのにどうして
生きていけるのか不思議に思うだろう。

ハキリアリはキノコを栽培する農業蟻だが、
このミツバアリの仲間は
アリマキを飼育する牧畜蟻なのだ。

アリノタカラと呼ばれる種類の
アリマキ、つまりカイガラムシがいる。

木の根から樹液を吸い、体内の微生物の
助けを得てそれを栄養に変えるのだが、
必要以上の糖分が生産されてしまう。

アリマキはこうした余計な糖分を
尻からひり出すのだが、
それを蟻が食料にするのだ。

このため、蟻はアリマキを保護するのだが、
アリノタカラとミツバアリ、
この種類のアリマキと蟻は筋金入りである。

アリノタカラは自分で移動することができない。
更にはミツバアリに体のメンテナンスを
してもらわなければ死んでしまう。

対して、ミツバアリはアリノタカラの
分泌する糖分だけを食べて生きている。

そして、それらの行為はすべて
ミツバアリの巣の中で行われる。

ヨツバアリやイツツバアリもいて、
それらに対応するアリノタカラもいる。
組み合わせが違うと生きていけないらしい。

さて、巣から出ないミツバアリだが、
一度だけ外に出る機会がある。

新しく女王となる蟻が、雄の羽蟻たちと共に
結婚飛行をする際だ。

他の蟻と同様に、交尾を行った女王蟻は、
新たな巣を掘り、新たな王国を作り出す。

ミツバアリの驚くべき点は、この新女王、
巣から飛び立つ際に、アリノタカラを一匹
口にくわえて出てくるのだ。

結婚飛行を行う間も、新たな巣を作る間も、
アリノタカラをくわえ続ける。

そして、新しい巣の中で、
木の根にアリノタカラを置くのだ。

木にとっては迷惑かもしれないが、
蟻たちの糞が案外栄養になっている
可能性もある。

もの凄いエネルギー循環ではないだろうか。