序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年3月17日日曜日

マタベレアリ

シロアリの天敵とでもいうべき蟻である。

サハラ南部に生息しており、
隊列を組んでシロアリの蟻塚を襲撃し、
自分たちの食料とする。

その鮮やかな戦いぶりは、多くの戦いに
勝利した勇敢な部族マタベレ族に
例えられ、この名で呼ばれている。

斥候蟻はシロアリの蟻塚を発見すると、
最短距離ではなく、最も平坦で通行しやすい
最速距離を探しながら巣へと帰る。

これは襲撃部隊が進軍しやすいルートを
予め用意しておくという周到な行動だ。

また、蟻塚を発見できなかった場合は、
なるべく遠回りをして巣へと帰り、
情報収集を怠らない。

なお、斥候蟻はシロアリとの
接触を極力避けるという。

シロアリにも兵隊蟻がいるため、
攻撃を受けず確実に情報を
持ち帰るためだろう。

こうした斥候蟻の存在は非常に特徴的だが、
マタベレアリにはもっと驚くべき
役割を持った蟻が存在する。

衛生兵蟻である。
シロアリとの戦いで負傷した仲間を救出し、
治療を施すのだ。

治療と言っても蟻である、
傷口を舐めるだけなのだが、
どうやらこれが感染症を防ぐらしい。

治療を受けた蟻の多くは回復し、
後に再び戦線に復帰することが可能だ。

戦場から負傷した仲間を担ぎ出す姿は
英雄的ですらある。

なお、足を何本も失い、治療を受けても
助かる見込みが無い蟻は、自分自身で
それを察し、衛生兵蟻の救護を拒否する。

戦場のドラマが日々繰り返されているのだ。

ところで、攻撃行動の特異なマタベレアリだが、
自分たちの巣の防衛は得意ではないらしい。

だが、グンタイアリのような
放浪するタイプの蟻が巣に近付くと、
彼らの体のメンテナンスを行うという。

脚や触角についた汚れを取り除くわけだが、
放浪蟻はおそらくこうした献身により、
彼らを襲うことが無い。

彼らの巣の周辺を放浪蟻がうろつくことになり、
巣が他の生き物によって襲われる
可能性が低下するのだ。

蟻とひとくちに言っても様々な種類が存在する。
そして、驚くべき不思議な性質
を持つものが少なくない。

まったく、大変興味深い生き物である。