序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年2月24日日曜日

サフラン

最も高級と言われる香辛料である。

クロッカスの変種の雌しべを乾燥させたものが
いわゆる香辛料のサフランである。

その栽培の歴史は古く、
少なくとも青銅器時代には
薬品として重宝されていたことが
壁画などから分かっている。

サフランは種子を実らせることができない。
雌しべが大きく長くなるよう改良を
繰り返した結果誕生した品種だ。

球根で増やさなければならないこの花が、
古代クレタ文明では、
すでに栽培されていたというわけだ。

古代のクレタ人やペルシア人は
サフランを主に薬品として扱った。

やがてギリシア、ローマの時代になると、
香料としての利用が主になり、
やがて香辛料として料理に使われるようになる。

臭みを消すこと、美しい黄色に染めること、
このふたつがサフランに求められることだ。

ヨーロッパではローマ帝国の崩壊により
サフランの栽培は行われなくなり、
後にイベリア半島でサラセン人が
栽培していたものがフランスへ流入する。

インドではペルシアから伝えられ、
カシミールのサフランといえば
最高級品を指すまでになった。

サフランの価値が最も高まったのは
ヨーロッパでのペスト流行の時期である。

ペストは当時、悪い空気によって発病すると
考えられていたため、香料や香辛料が
予防や治療に用いられた。

ローズマリーやセージなどが使われたが、
古代から続く伝統もあり、
サフランが最高のものだと考えられたのだ。

そして、インドやペルシアから運ばれてくる
サフランを狙い、海賊が横行する。

金塊輸送船よりもサフランを積んだ商船の方が
はるかに狙われやすかったほどだ。

海賊だけではない。
偽装サフランも古代から横行してきた。

偽物の混入、油によるかさ増し、
高級品と低級品の混合、産地の偽装。
こうした問題は現代でも続いている。

ただ、高品位のものを求めないのであれば、
昔と比べると容易に入手できるようになった。
サフランライスやパエリアを気軽に食べられる。

それでも、香辛料売り場に行けば
他の香辛料とサフランの価格の差は一目瞭然だろう。
同じぐらいの値段で売っていても、
明らかに量が少ないのだから。

とはいえ、歴史的にサフランとあまり縁の
無かった本邦ではサフランでなければならない、
というようなものは無い。

ターメリックライスで構わないし、
パエリアが黄色くなくたっていい。

サフランの香りと言われてもぴんとこないだろう。
ワサビが本物かどうかのほうが重要である。

サフランの文化が無いのだ。