序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年2月12日火曜日

玉虫

美しい羽で知られる甲虫である。

その名の玉は球のことではなく、
美しい宝石を指すギョクである。

木の皮の間に卵が産み付けられ、
孵化した幼虫は木を食べて育つ。

果樹園や庭園の木に住み着けば、
それらをダメにしてしまうため、
害虫として駆除の対象ともなる。

しかし、構造色による羽の美しさは
珍重されており、宝物として
扱われてきた歴史を持つ。

構造色とは物質そのものの持つ色ではなく、
微細な構造が光に干渉することで
発色しているように見えるものである。

玉虫の羽は通常、緑色に見えるが、
見る角度によっては様々な色に見える。

死後も色彩が劣化するということはないため、
玉虫の羽を集め、服飾や工芸などにおいて
素材として用いられてきた。

なぜ玉虫はこのような目立つ色を
しているのだろうか。

鳥は色が変化するものを嫌うという。

金属光沢を持つ紙片を風になびかせることで
鳥害を防ぐ方法があるが、
あれと同じことだろう。

ただし、防鳥グッズは玉虫のように
自由には動かないため、鳥たちが
危険がないことを学習すれば効果はなくなる。

つまるところ、得体の知れない色によって
鳥に警戒心を抱かせ、
その隙に逃げ隠れするための構造色なのだ。

人間のようにその色に興味を持って
寄って来る生き物には逆効果であるが、
玉虫が絶滅していないということは
天敵を避けることに成功しているのだろう。

ちなみに玉虫色という言葉がある。
はっきりとしない特定できない色のことだ。

詩情を感じさせる美しい言葉だが、
良い意味では使われない。

どうとでもとれる曖昧な表現に
対して否定的に使われる言葉であるためだ。

何事も白黒つけなければならないわけではないが、
はっきりしないまま有耶無耶にするのが
常に良いというわけでもない。

婉曲表現は人と人の間の潤滑剤となるが、
すれ違いの原因ともなり得る。

玉虫色が良いものか悪いものかは
結局見た者が各々判断するしかないのだろう。