序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年2月2日土曜日

モウセンゴケ

名前にコケとついているが苔ではない。
種子植物である。

だが、実際のところ根はほとんど退化しており、
勘違いされたのも致し方ない。

モウセンとはフェルトのことであり、
フェルトとは繊維を叩いて縮ませ、
絡み合わせて圧縮、板状にしたものである。

正倉院の宝物の中にも毛氈があり、
長らく山羊毛だと思われていたが
どうやら毛だったようである。

話が逸れたが、モウセンゴケは
いわゆる食虫植物である。

葉には無数の毛のようなものがあり、
その先には粘液が滲出、
水玉となってくっついている。

この粘液からは甘い香りがし、
昆虫が誘い寄せられていく。

粘液は粘性が高く、くっついた虫は
容易に離れることができない。

そこで虫は呼吸器に粘液が入り込んで
窒息死し、微生物に分解されて
モウセンゴケが利用できる栄養となる。

根が退化していても
このようにしてモウセンゴケは
栄養を得ることができるのだ。

なお、モウセンゴケは冷帯全域と
本邦のほとんどの地域の
湿地帯に生育する。

しかし、湿地帯ならどこでも良いわけでなく、
生育条件は限られており、
分布域を広げるような進化は起こっていない。

このため湿地帯の減少と共に
数を減らしており、現在は
絶滅が危惧されているようだ。

なお、苔ではないので立派な花を咲かせる。
食虫植物とは思えない
穏やかで可憐な白い花だ。
種類によってはピンク色の花を咲かせる。

モウセンゴケは虫媒花である。
花粉を虫に運んでもらうのだ。

そのために花は葉よりかなり高い位置に咲き、
花粉の付いた虫が葉の粘液に
絡め取られないようになっている。

進化とは不思議なもので、
どのような過程を経て、
このような形になったのか大変興味深い。

私はインテリジェンスデザインは信じない。
こうした不思議な生き物は
自然のカオスの中でこそ生み出されるもの、
そう考えている。