序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年2月11日月曜日

林檎

アップルとは本来、果実を意味する言葉である。
かつてはリンゴだけを指す言葉ではなかった。

たとえばパイナップルはパインアップル、
松の果実という意味で、リンゴとは関係ない。

また、旧約聖書に登場する知恵の木の実は
リンゴであると認識されていることが多いが、
英語において果実という意味でアップルと
訳されたため林檎とは限らない。

むしろ当時のイスラエル周辺で
食用のリンゴがイメージされたとは思えず、
別の果実であろうと思われる。

ヨーロッパの各種神話や伝説に登場する
黄金のリンゴや常若のリンゴも同様に、
林檎であるとは限らない。

名前といえば、本邦においても、
林檎とは本来リンキンと読む。

檎とは禽、つまり鳥が多くとまるほど
良い果実の生る木ということである。

さて、リンゴはコーカサスが原産だと言われている。
そこからヨーロッパ方面と東アジア方面へと
伝播したわけだが、暑い地域では生育が難しい。

我々が普段目にするのはヨーロッパのリンゴであり、
東アジアの林檎はかなり小さい。

江戸後期にアメリカよりセイヨウリンゴが
やってくるまでは、本邦では小さな果実を
林檎と認識していたのだ。

古い文献において登場する林檎を
セイヨウリンゴの大きさだと思ってはいけない。

ヨーロッパにおいては、寒い地域でも得られる
甘くて栄養豊富なこの果実を珍重してきた。

ゲルマン人が果実全般を意味する言葉で
リンゴを呼んでいたほど、
果実と言えばリンゴだったのである。

黄金のリンゴや常若のリンゴが林檎とは
限らないと前述したが、北欧神話の場合は
こういった理由から林檎であった可能性は高い。

リンゴといえば、本邦では一般的ではないが、
ブドウのように酒に加工される果物である。

リンゴのワイン、サイダー、あるいはシードルと
呼ばれる林檎酒は、の悪い地域での
飲用水として重要であった。

しかし、アメリカでは禁酒法によって
アルコール飲料が禁止された時期がある。

その際に、発泡性のリンゴジュースのことを
サイダーと呼ぶようになった。

だが、本邦では甘味をつけた炭酸水がサイダーだ。
その由来は複雑で面倒なので省く。

簡単に言えば最初に本邦で売られた炭酸甘味飲料が
リンゴのフレーバーがついていたために
商品名の一部にサイダーと付けられていたことで、
サイダーとはそういうものだと思われたためだ。

これは元を辿ればイギリスで飲まれていた
炭酸水入りレモネードなのだが、
そちらはラムネとして本邦に伝わった。

つまりサイダーとラムネは同じものなのだ。
現在ではラムネ瓶に入っているかどうかが
サイダーかラムネかの違いである。

リンゴと関係のない話になってきたので
ここらで終わらせておこう。