家畜化される前の豚の原種である。
牙と剛毛を持つ豚と言えば、
外見的特徴は説明できるだろう。
丸っこい胴体と短い足を見る限り、
鈍重そうな印象を受けるが、
運動性能は極めて高い。
具体的には疾走する猪に追突されれば、
最悪死亡する可能性まである
衝撃を受けることになる。
顎の力が強いため、
噛まれれば骨を砕かれかねない。
また、雄は非常に鋭い牙を突き上げる。
成人であれば丁度太ももに刺さる高さであり、
大動脈が損傷して失血死する例多々である。
鼻先でものを押す力がとても強く、
岩をどかして食べ物を探すほどだ。
そんな力で牙を突き上げられては
ひとたまりもない。
水を嫌う性質ではあるが、
必要に応じて泳ぐこともできる。
食料を求めて瀬戸内を渡っている例もあるため、
その水泳能力はかなり高いと見ていいだろう。
普段はドングリやタケノコを中心とした
植物を食べているが、雑食のため
動物の肉を食べることもある。
問題は人里に現れ田畑の作物を
食害することである。
これは古代から変わらぬ問題であり、
三重の伊我理神社の祭神は、
猪を狩る女神である。
イノシシのシシは肉を意味する。
元々はヰ一文字でこの動物を示し、
ヰの肉でイノシシとなるのだ。
その名が示す通り古代から食料として
狩猟されてきた生き物で、
馴化させ半ば家畜として扱うこともできた。
完全に家畜化された豚は
チャイナで生まれている。
あちらでは猪という字は豚のことを指し、
本邦でいうところのイノシシは
野猪と呼び分けている。
本邦では仏教的観念から肉食を忌避する
習慣があったが、猪肉に関しては
こっそりと、あるいは滋養強壮の薬
ということにして公然と食べられてきた。
絵の構図で獅子に牡丹という堂々とした
王道の描き方がある。
獅子は肉(しし)と音が同じため、
イノシシに牡丹ということで、
猪肉の隠語は牡丹となった。
ぼたん鍋や牡丹肉という呼び名は
こうした由来がある。
イノシシ本来の生息域は東アジアから
ヨーロッパにかけてである。
しかし、新大陸に持ち込まれ、
そこで繁殖したため、
アメリカやオーストラリアの
一部にも生息している。
人が被害を受けることはどの地域でも変わらず、
それぞれの地域で対策に頭を悩ませている。
まだまだ猪にまつわる話は尽きないが、
きりがないのでこの辺りで筆を置こう。
追記
犬の項でも書いたが、
干支の動物は身近な生き物を当てはめたもので、
特に意味は無い。