序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年11月12日月曜日

ローマ

ローマである。

それ以上の説明など必要だろうか。
人類史上に燦然と輝くローマである。

もっとも、冷静に見るならば、
長い歴史の中でローマが煌めいていたのは
一時期のことではある。

それでも、過去の栄光は現在も
その名を照らし続けており、
地球上のあらゆる場所から
ローマを一目見ようと人々が集まる。

名所や名物を敢えて挙げるのも野暮だろう。
偉大なるローマ帝国の歴史を語るのも
私の役割ではないように思う。

なので、ローマのはじまりの話をしよう。
ローマは一日にして成らずである。

伝説によればローマが建設されたのは
イリアスやオデュッセイア、
つまりギリシア神話で
語られる時期の少し後である。

愛の女神の息子とされる
トロイア王族の生き残りアイネイアスは
滅亡した国を離れ安住の地を求めて旅をした。

デロス島で祖先の地を目指せとの託宣を受けた彼は
トロイア人の祖テウクロスが生まれたとされる
クレタ島を目指した。

だが、クレタ島で彼は別の始祖
ダルダノスのことを聞かされる。
つまり、託宣のあった祖先の地とは
クレタ島ではなかったということだ。

しかし、始祖の地へは二頭の怪物、
スキュラとカリュブディスの住む
メッシナ海峡を抜けなければ辿り着けない。

オデュッセウスの行く手を阻んだ
あのメッシナ海峡である。

賢明な彼はメッシナ海峡を避けるため、
シチリア島を大きく迂回し、
西からイタリア半島へと到達した。

彼が辿り着いたのは肥沃なラティウム。
平らな土地という意味の名を持つその地に、
現在のローマはある。

だが、事は平和裏には進まなかった。
アイネイアスは現地の政治的軍事的均衡を崩し、
大きな戦争を引き起こす。

だが、この戦いの勝者となったことで、
彼はラティウムの有力者となり、
アルバ王家の始祖となる。

時は流れ、アルバ王家に王位継承争いが勃発した。
弟は王位を継いだ兄を追放し、自らが王になると、
兄の一人娘を神殿の巫女とした。

神に仕える巫女は婚姻を許されないため、
兄の家系の断絶を狙ったのだ。

しかし、巫女は軍神に見初められる。
神との婚姻なのだから誰も咎めることはできない。
こうして、巫女は双子の息子を生んだ。
ロムルスとレムスである。

王がその双子の王位継承権を認めるわけがない。
兵を差し向け殺害を命じた。
だが、兵士は赤子を殺すことを躊躇い、
籠に入れて川へと流す。

双子は岸に流れ着き、河畔に住む狼に育てられた。
成長した双子はやがて人々を率い
悪しき王へと挑むことになる。

双子は共に王となり、新たな都を築こうとしたが、
その場所について兄弟で意見が割れ、
次第にふたりの仲は険悪になっていった。

そして、決裂の時を迎える。
勝利したロムルスはパラティーノの丘に
自身の名に由来する都市ローマを建設したのだった。

ローマの建国神話である。

本当はこのままローマの歴史を書き連ねたいが、
そういうわけにもいかないので
続きが気になる方は先達の名著に当たってほしい。

ところで、ローマ通を自認する知人曰く、
ローマで最も働き者なのは詐欺師であるという。

真偽はともかくとして、
ローマは世界中から訪れる
観光客慣れした大都市である。

旅人を狙った犯罪は枚挙にいとまがないため、
歴史に触れて感動するのも大事だが、
自衛を怠らぬよう注意されたし。