序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年11月20日火曜日

ポルダー

水深の浅い入り江や湖沼から水を抜き、
干上がらせて陸地とすることを干拓というが、
ネーデルラントの干拓地をポルダーと呼ぶ。

ネーデルラントは元々氷河によって削られた地形で、
そこに土砂が堆積して海抜の低い土地が形成された。

このため、湿地が多く、海水面が上昇すれば
度々水浸しになる地域であった。

かつてネーデルラントをえぐるように存在した
ゾイデル海はこうした理由から拡大し続け、
かの地を侵食していった。

だが、ネーデルラント人は巨大な入り江と化した
ゾイデル海の出口に大堤防を築き、
長い年月を掛けてその水を抜いてしまった。

堤防には水門が設けられており、
干潮時には門が開けられ海水が出て行き、
潮が満ちる前に締め切ることで
かなりの水を抜くことができる。

その後は風車の動力によって水を汲み上げ、
地道に海水を排出していった。

陸地を増やすこと、それは農地を増やすことであり、
食料生産量を増やし、人口を増やすことができる。

更には数多く建てられた風車は、
様々な労働を機械化し、
ネーデルラントに多くの産物をもたらした。

それだけではない。
風車の羽に使われる帆布や、木工技術の発展は、
そのまま船舶へと応用され、ネーデルラントの
海運立国を下支えすることになったのだ。

土地を広げ、商品を生み出し、交易を強化した
ネーデルラントは、海洋帝国に成長する。

世界は神が造ったが、ネーデルラントは
ネーデルラント人が造ったという言葉がある。

自然への挑戦、自然の管理。
ヨーロッパ人は自然を克服し、
意のままにすべき対象と考えている節があるが、
ネーデルラント人はその気風が特に強い。

そういえばチャイナの歴史も治の歴史である。
彼らも自然とは人の手で
造り変えていくものだと考えている気がする。

ちなみに、本邦でも干拓は埋め立てと並んで
盛んに行われてきた。

神田山を削り取り、日比谷湾を埋め立てて
江戸を造るようなこともしている。

だが、どちらかと言えば、
本邦は自然には逆らわず、
諦めて従う傾向が強いように思う。

その土地土地で自然との向き合い方は違う。
そうした違いが異なる文化を生み出し、
文化と文化の衝突が更なる文明を築き上げる。

こうして、人類の歴史は造られてきた。
世界は神が造ったのかもしれないが、
歴史は人が造るものなのである。