赤鉄鉱や鏡鉄鉱と呼ばれる鉱物である。
稀に薔薇状で産出することがあり、
鉄の薔薇、アイアンローズなどという
格好いい呼び名もある。
代表的な鉄鉱石であり、
通常は精錬され鉄材となる。
ヘマタイトの名がギリシア語の
血の石に由来するように
酸化鉄らしい赤い色をしているが、
金属光沢を持つ黒いものも存在する。
黒く光沢の優れたものは磨かれ、
貴石として扱われて装飾品に
用いられるのだが、これがまた美しい。
宝石類の美しさというよりも、
磨き抜かれた鉄としての
質実剛健な美しさを感じる。
私が子供の頃、鉱山見学の土産物に
小さな鉱石が色々と取り付けられた
キーホルダーを買ってもらったことがある。
その中で私を一番魅了したのが
このヘマタイトだ。
面白いのがこの黒一色のヘマタイト、
削ると粉末が赤い。
酸化鉄なので当然とも言えるが、
輝く黒石が鮮やかな血の色になるのは
なかなかに衝撃的である。
血の石と名付けられたのも頷ける。
呪術的にも血液に関する傷病の
治癒を願う護符として用いられていた。
また、鏡鉄鉱の別名が示すように、
鏡として用いられることもあった。
鏡と言っても古代の鏡は黒曜石の鏡のように、
自分の顔を克明に見られるようなものではない。
技術が発達する以前は
自分の顔を見ることすら一苦労だったのだ。
ところで貴石の類はパワーストーンとして
おまじない好きの心を惹きつけてやまないが、
ヘマタイトはそれほど人気が無いようだ。
あまり突飛なことは書かれておらず、
伝統的な説明のみなことが多いのは
不人気が理由かもしれない。