序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年11月22日木曜日

ヘンルーダ

地中海を原産地とする香草である。

本邦ではヘンルーダと呼ばれているが、
実はこの名称は本邦でしか通用しない。

多くの国では単にルー、あるいはルータ、
ルートなどと呼ばれている。

特に品種を指定するような場合には、
英語ならコモンルーのような呼ばれ方をする。
コモンとは一般的な、という意味だ。

本邦へは江戸期にオランダ人が持ち込んだ。
オランダ語ではヴィンルートである。

これが訛っていつの間にか
ヘンルーダとなっていたわけだ。

爽やかな苦みを楽しめるハーブだが、
微量の毒性があることが知られるようになり、
利用は廃れていった。

大した毒ではないのだが、
肌が弱い者が触れればかぶれるし、
妊婦が摂取すれば流産の危険がある。

小さな黄色い花は見応えがあるとは言えず、
その葉は蝶の幼虫の大好物である。

つまるところ、現代では
あまり有用性のない植物なのだ。

だが、昔は薬草として重宝されていた。
主な効能は痙攣を鎮めることである。

製油したルーオイルは、
芸香と書いて うんこう と読まれ、
本の虫食いを防ぐとされた。

また、古代ローマでは視力を高める効能が
あると信じられていたようで、
目をよく使う職業の者が服用していた。

女性の月のものがなかなか来ない際に使う
通経剤としての効能は確認されている。
この効能が前述の流産の危険性に繋がるのだ。

いずれにせよ、現在では
わざわざヘンルーダを栽培し
利用する必要性は薄い。

イタリアの蒸留酒グラッパの香り付けに
使われることがある程度だろうか。

なお、魔術関連の文献に当たっていると、
しばしばヘンルーダを使用した
呪術が登場する。

薬の材料であったり、香として焚いたり、
よくわからないがとりあえず
それらしいものの名前を
列挙する際に加えられたりする。

恐らく、ハーバリストが堕胎薬として
使っていたイメージの名残で
魔女と結び付けられているのだろう。

悔恨という花言葉も由来はきっと
堕胎がらみだろう。
いずれにせよ、気分の良い想像は難しい。

ちなみに、ミカンの仲間の植物である。