スピーカーのような虫である。
羽をこすり合わせて音を出し、
腹部の空洞によって音を共鳴させ、
大音量で鳴き続ける。
雄の成虫の体は音を出すことに特化しており、
本邦の夏の風物詩となっている。
本邦ではその鳴き声が夏の象徴として、
愛されているかどうかはともかくとして、
一般に認知されている。
だが、海外ではノイズでしかなく、
本邦のアニメ作品で夏を象徴する
音声として起用されていても
あの音は何だと不思議がられるという。
彼らはその生涯のほとんどを
幼虫として地中で過ごす。
太古の昔には一年ごとに成虫となり、
毎年多数のセミが鳴き交わしていたが、
生存競争の激化により、
同じ年に成虫となる数を減らし、
年度をずらすようになっていった。
その結果、現在のセミたちは
七年、十一年、十三年といった
素数の年毎に成虫となり、
同族同士の争いを避けている。
ちなみに鳴くのは雄である。
雌は共鳴機関の代わりに卵巣など
生殖に関わる機能が腹部に詰まっており、
大音量で鳴くことはない。
大陸ではセミの幼虫が羽化し、
成虫となる様を神格化し、
羽化登仙という言葉が示すように、
不老長寿と結び付けて考えられてきた。
対して本邦では成虫となってから
短期間で死んでいく様を重視し、
諸行無常の切なさの象徴とされてきた。
また、幼虫が殻を残して羽化することから、
残った殻を うつせみ と呼び、
様々な文物に影響を与えている。
世界的には食用とする地域が少なくない。
古くはギリシアのアリストテレスが
羽化する前の幼虫のセミの美味を語っており、
昆虫記で知られるファーブルもその味を確かめた。
もっとも、ファーブルは
客人に出せる料理ではない
と評している。
漢方薬の素材としても使われており、
解熱作用があるとされている。
現在の漢方処方にも記載されており、
使われるかどうかはともかくとして、
薬局で取り扱われている。
戦後の食糧難の時期には本邦でも
成虫を味噌につけて食べたと言われており、
私の祖母も食べたことがあると言っていた。
おそらく雄は食べる所が少ないため、
美味いのは雌が幼虫だろう。
ファーブルも調理法を誤ったのでは
ないだろうかと思う。
ちなみにセミに尿をかけられる事例が
枚挙にいとまがないが、
彼らの排泄する尿はほぼ真水である。