序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年7月26日木曜日

アルミラージ

額に生えた一本の角が特徴的な動物だ。
姿かたちはウサギに似ているがかなり大きい。
肉食獣である。

インド洋に浮かぶアルティニン島に生息しており、
角は黒く、体毛は黄色く細かい。
この体毛は日光を浴びると金色に輝き、美しい。

黒い角はまるで槍のように長く、
螺旋状に捻じれているのだが、
アルミラージはこの角を使い狩りを行う。

自身より大きな動物が相手でも、
怯むことなく角を振りかざし、
時には人間ですらも刺し殺されることがある。

角は折れても再び生えてくるということはないため、
角の折れた個体は生き延びられないと考えられる。

貪欲で、体の大きさに比べて多すぎるのではないか
と思えるほど食物を摂取するため、
満腹時は腹部が大きく膨れ上がる。

他の肉食獣同様、家畜化は不可能だが、
かつてはこの動物を慣れさせ、
飼育する技術を持った者たちがいたらしい。

アルティニン島をアレクサンドロス大王が訪れた際、
アルミラージが贈られたという記録がある。
飼育が困難なため、大王は技術者も
連れて帰ったものと思われる。

また、伝説によれば、大王は島に棲むドラゴンを退治し、
その謝礼としてアルミラージを贈られたという。
ティニンはアラビア語で竜を意味する。

なお、アルミラージとは天国を意味するアラビア語である。
恐らく金色に輝く毛皮から、天国の生き物を
イメージして名付けられたのだろう。

黒い螺旋状の角は、北極海のイッカクの牙と共に、
呪術の道具として重宝された。

変わったところでは、この角を加工した槍がある。
金属と比べると脆いため、
恐らくは儀礼用か装飾用だろう。

一本角は古来より神秘的なものとして伝えられている。
おそらく、アルミラージの角も
毒を浄化する力があると考えられたのだろう。