序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年4月23日月曜日

石綿

繊維状の鉱物である。
とても細い石の糸が綿状に絡み合い、
ふかふかとした柔らかさを実現している。

その細さは筆舌に尽くしがたく、
髪の毛など比べ物にならない。

近頃は石綿と呼ぶよりもアスベストと言った方が
人口に膾炙しているだろう。

ギリシア語で「消化できない」という意味なのだが、
恐らく食い意地の張った者がこれを食らい、
消化できずにそのまま出てきてしまったのだろう。

耐久性、耐熱性、耐蝕性、絶縁性に優れ、
軽くて安価なため奇跡の鉱物として重宝されていた。
かつては。

しかし、その細かさのために極小の粉塵と化し、
吸い込めば肺に蓄積されてしまうという
問題が発覚してからは敬遠されるようになった。

おそらく石綿の話題を聞く場合というのも、
アスベスト被害の報道が主だろう。

だが、そうした問題点が発覚するまでは、
人々は様々な用途にこの石綿を使っていた。

特に建物での需要が高く、防音のため、
断熱のため、配線を覆う絶縁体として、
大いに活用されていた。

古代においてはエジプトのミイラを包む布、
ローマのランプの芯などに活用されていたことが有名だ。

また、チャイナでも布として扱われ、
汚れた場合、火にくべると汚れだけ燃えてなくなるという点から、
火で洗う布、火浣布と呼ばれていた。

ヨーロッパでは火蜥蜴の皮と呼ばれ、
鉱物だと知らない者はその神秘性に慄いた。

本邦の古典、竹取物語において、
かぐや姫が求めた無理難題のひとつ、
決して燃えることのない火鼠の皮衣というものも、
もしかしたら石綿がイメージの源泉なのかもしれない。