序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年4月1日日曜日

海鞘

海に生えている植物のような動物である。

突起の沢山ある赤い電球のような見た目であり、
海のパイナップルと呼ばれることもある。

本邦では主に東北地方で食されており、
西側では存在自体を知らない人も多いだろう。

外皮は硬く食べられないため、
内臓を取り出して食べる。

オレンジ色のぷりぷりとした内臓は、
甘み、苦み、若干の酸み、海の塩味が楽しめる。

控えめに言って、日本酒の肴とするために
存在するような味である。

ただし、鮮度が落ちるのが早く、
独特の臭気を発するようになってしまう。

このえぐみが好きだと言う者もあるが、
ホヤを食べたことはあるが好きではないと
答える者の多くは鮮度の落ちたものを食べたのだと思う。

磯臭いものが苦手だという場合は仕方がないが、
ウニやカキが食べられるのなら
ホヤの美味しさもきっと理解できるはずだ。

フランスやチリでも食材として利用されている。
映画「フレンチ・コネクション」において、
ワイルドな食べ方をしている場面があるので
機会があれば観てみてほしい。

さて、ホヤは岩などに根を張るように張り付き、
海中のプランクトンを食べる生き物である。
動きの無いイソギンチャクのようなものだ。

しかし、見た目からは想像もつかないが脊椎動物に近く、
軟体動物や甲殻類、植物とはかなり異なる。

その証拠とでも言うべきものが、ホヤの幼体である。
彼らはいわゆるオタマジャクシとして産まれてくるのだ。

そこから植物然とした見た目に変態するのだから、
世の中分からないものである。

ちなみに、植物のようだと言う点に
拘っているのには理由がある。

ホヤは植物の専売特許とでも言うべき堅い細胞壁、
セルロースを作り出せる唯一の動物なのだ。

ホヤの硬い外皮はセルロースに由来するのである。
食べられるのは内臓だけなので、
間違って外皮を煮込まぬよう注意されたし。