序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2020年1月9日木曜日

サルヨキ

非常に硬いキノコである。
俗に言う猿の腰掛けタイプであり、
サルヨキのサルは猿のことだ。

ではヨキとは何かというと斧である。
今ではあまり聞かれないが、
伐採用の斧を よき という。

伐採用の斧には片面に三本の筋が入れられ、
逆の面には四本の筋が入れられている。

三本の筋は、幹や神酒を意味する三であり、
四本の筋は、四気や善きを意味する四である。

四気とは樹木を生育させる日光と空気、
土と水のことを指す。
斧をヨキと呼ぶのは、この四気に由来する。

また、三を四ける。身を避けると掛けてあり、
切り倒した木の下敷きにならぬようにという
願掛けが込められている。

さて、話をサルヨキに戻そう。
このキノコは半月状ではなく、
少しせり出し、斧頭のようになっている。

極めて硬いため、確かに研げば
斧として使えそうにも見えるが、
さすがにそれは難しい。

そして、残念ながらこのキノコには
三本の筋も四本の筋も無い。

お猿の斧には霊験あらたかな
加護はないようだ。

とはいえ、猿とは身軽なものである。
地方によってはこれを携帯し、
身を避けるお守りとしていた。

猿避きと考えて、猿による農作物の
食害を防ごうというまじないもある。

なお、硬くて食べられないのは
言うまでもないが、出汁も良くない。
木の味しかしない。

霊芝同様に、薬効も期待できないため、
結局のところ、まじないものでしかない。
人の役にも猿の役にも立たないようだ。

もっとも、当のサルヨキにとっては
人間が勝手に付けた名前など
どうでもいいだろうが。