フルール・ド・ギヨタン。
フランス語でギロチンの花という意味だ。
血のように赤いマーガレットの品種である。
まずはギロチンについて解説したいと思う。
本邦の歴史には無いものだからだ。
ヨーロッパにおいて斬首刑は
火刑や絞首刑より軽い刑罰であった。
苦しむ時間が短いからである。
異端は火炙り、海賊は縛り首といった
極刑のイメージがあると思う。
じわじわと苦しみながら死ぬのだ。
とはいえ、斬首には技術が必要だ。
一撃で首を落とせなければそれはもう苦しい。
それゆえに、死刑執行人は世襲の技術職で、
いくつかの特権も持っていた。
腕の良い執行人は罪人を
苦しませずにあの世に送る。
フランス王家に仕えたサンソン家が有名だ。
フランス革命が起こると、
多くの者が処刑された。
執行人大忙しである。
ジョゼフ・ギヨタンという医者がいたのだが、
彼は人道的観点から、罪人の苦痛を
少なくしてやりたいと考えた。
そこで持ち出したのが古い時代に発明された
断頭台、いわゆるギロチンである。
ギロチンの名はギヨタン医師の名だ。
なお、彼自身ギロチンで処刑されたというのは
誤って流布された俗説であり、
実際には病没している。
さて、処刑は娯楽である。
何を言っていると思われるかもしれないが、
昔は憎むべき罪人が惨たらしく殺される様は、
人々の数少ない娯楽だった。
革命時の死刑の乱発は
熱狂した民衆の望んだものである。
苦しみの少ないギロチンは目新しさと、
首がごろんと落ちる様子から人気を博した。
だが、執行時間がとにかく短い。
八つ裂きや車裂きに慣れた民衆には
少々物足りなかったのだ。
そこで、様々な演出が工夫されるようになる。
話がやっと戻ってきたが、
血に見立てた赤い花を沢山用意するのも
そうした演出のひとつだ。
断頭台の周囲に植えられた血の色の花。
革命の熱狂を今に伝える赤である。
ちなみに、この花がギヨタンと
呼ばれるようになる前の名前は血の花である。
大して変わりない気もするが、
月経痛を和らげるという民間療法薬であった。
残念ながら効果はない。
革命の熱狂が去ってもこの花の名は
変わることはなかったが、
ギヨタン医師の子孫は改名している。