序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2018年2月23日金曜日

木綿

誰でも知っているようなことだが、
ワタという植物の種子の周りにできる木綿と呼ばれる繊維がある。

最古の綿花栽培はインダス文明まで遡り、
かの地では長い年月の間主要な産物となってきた。

毛によく似たこの繊維は中世以前の
ヨーロッパ人にとっては奇異な存在だったという。

サラセン商人の手を経て木綿を手に入れたヨーロッパ人は、
これを羊毛の一種であると考えた。

しかし、サラセン商人は植物の繊維だと言い張った。

植物にこのような毛が生えるわけがないと考えたヨーロッパ人たちは、
「羊のなる木」という空想上の存在を生み出した。

バロメッツと名付けられたその生き物は、基本的には植物である。
しかし、幹の上には羊によく似た動物が実っている。

その動物が空腹を覚えると植物は萎れ、動物の口が地に届く。
すると動物は周囲の草を食み元気を取り戻す。
幹は再び直立し、動物は樹上へと戻る仕組みだ。

インド人はそのバロメッツの毛を刈り、
サラセン商人に売りつけていると
ヨーロッパ人は考えたのだ。
奇想である。

現実の綿花は大量のを必要とする作物である。

木綿は優れた繊維であるため、
いつの時代にも様々な地域で需要が生じた。
このため、各地で栽培が開始されるのだが、水の問題が生じる。

本来であれば水資源の豊富な地域でしか栽培できないはずの植物を
灌漑によって量産してきたツケを払わなければならないのだ。

食料となる作物の減産、水不足、相場の変動など、
栽培地域を数々の困難が襲う。
これは現代でも変わらぬ状況だ。

化学繊維が発達した今でも、木綿の需要は高い。
人類に不可欠な植物なのである。