序説

序説

かの偉大なる博物学者ガイウス・プリニウス・セクンドゥスに倣い、 聞きかじった内容を元に森羅万象を書き記すものである。 なお、各項目に記す内容の真偽は検証せず、 嘘、大げさ、紛らわしいことを恐れずに執筆していくため、 読者諸兄はこの点に留意していただきたい。 物事を伝...

2019年4月1日月曜日

クレピタンス

サンドボックスツリーやスナバコノキと
呼ばれるとても攻撃的な樹木である。

アメリカ大陸の熱帯地域に生育する
この木の何が攻撃的かというと、
幹に鋭いトゲがびっしりと生えているのだ。

この木に抱き着いたら血まみれになるだろう。
本当に冗談のような外見をしている。

それだけではない。この木の樹液は毒だ。
毒矢に使われるほどの本格的な毒を持つ。

トゲも毒も何のために持っているのだろう。
何から身を守る必要があったのだろうか。
どうにも過剰な防衛機構のように思える。

きわめつけは種子である。
そう、攻撃的なのは
トゲと毒だけではないのだ。

クレピタンスの果実は熟し、乾燥すると爆ぜる。
はじけることで種子を散布する植物は
少なくないが、この樹木は一味違う。

ダイナマイトの木という別名があるほど
凄まじい勢いで爆ぜる。

実際、手榴弾かと思うほどの勢いだ。
タネばくだんは実在したのだ。

なお、サンドボックスツリーの名は
攻撃性とは関係が無い。

乾燥しきる前の果実は使用済みのペンの
インクを吸い取る砂の容器として
利用されていた。

実際、菊の御紋のような南瓜のような
素敵な小物入れに最適な
お洒落な形をしている。

ただ、これがはじけるのだから恐ろしい。
種子も鉤状になっており、
殺傷力が高いだろう。

もちろん、他の生物を害するために
爆ぜるわけではない。
より遠くへ種子を飛ばすためだ。

しかし、トゲといい毒といい、
人間を驚かせるために生まれたと
思いたくなってしまう植物である。