ハチスとも呼ばれるが、ハチスと言えば
蓮の別名として使われることの方が多い。
インド近辺が原産地と目されており、
西アジアで人気の高い植物である。
本邦へは平安時代までには伝来しており、
夏から秋にかけて咲く花として
昔から愛されてきた。
ただし、花の咲くのはただ一日で、
ぽとりと落ちることから不吉であると
忌み嫌われていた時代もあった。
特に、祝いの席に木槿を飾ることは禁忌とされ、
茶華としても嫌花や禁花とされていた。
しかし、千利休は彼の理念である一期一会に
合致する花としてこれを好み、
現在の茶道界ではむしろ人気の花となっている。
たった一日の命を感傷的かつ肯定的にとらえたのは
何も千利休だけではない。
白居易もその儚さを詩にしている。
松樹千年終是朽 槿花一日自成栄
槿花一日の栄、槿花一朝の夢といった
諺はこの白居易の詩に由来する。
漢詩を紹介したのでお気に入りの和歌も
紹介しよう。斎藤茂吉の作である。
雨はれて 心すがしく なりにけり
窓より見ゆる 白木槿のはな
潔く散る槿花と雨上がりの清々しさ、
雨天の暗さが晴れて明るくなったところで
目に留まる白い花。心洗われるような情景だ。
比較的冷涼な気候でも生育することから
ヨーロッパ人もこの花を好んでいるのだが、
十字軍がシリアより持ち帰ったと伝えられている。
また、南国の花として知られる
ハイビスカスの仲間であるのも面白い。
かなり性質が違うがよく似ているところもあるのだ。
さて、ムクゲというとコリアの国花とされている。
しかし、実は伝統的にかの地で愛されてきたかと
いうとそうでもない。
由来は判然としないが、近代に入ってから、
国花として指定されたものと思われる。
詩に歌われたり、宮中行事に飾られたりといった
記録も特にないため、なぜこの花を
国花に選んだのかよくわからない。
むしろイスラム圏の方が
よほどこの花を愛する文化が見られる。
なお、樹皮は生薬として抗菌作用が認められている。
花も乾燥させ、抗炎症剤として使われてきた。
鑑賞に留まらず薬ともなる有益な植物なのだ。