絹に似せて作られたレーヨンで織られたものもこう呼ぶ。
パイル織とは、布というものはそもそも
経糸と緯糸だけで事足りるのだが、
そこに毛羽立たせるための経糸を加えたものである。
こうした作り方からパイル織のことは添毛織とも呼ぶ。
糸を追加で足しているため、添毛というわけだ。
添毛された経糸をそのままにした場合、
ループパイルと呼ばれるのだが、
これはいわゆるタオル生地である。
タオルの表面の毛羽立ちは
輪っかになった糸であることは
一目見ればわかることだろう。
この輪っかを意図的に切ったものをカットパイルと呼ぶ。
これを絹もしくはレーヨンで作り、
毛足があまり長くないものがベルベットなのである。
ちなみに毛足が長いものはベルベッティーンと呼ばれ、
普通は綿で作られる。
本邦では別珍とも呼ばれる。
さて、本題のベルベットだが、これは英語での呼び名である。
生み出されたのはルネサンス前夜のイタリアで、
ラテン系言語ではビロードと呼ぶ。
十字軍の活動によってサラセン科学がヨーロッパ人に
知られるようになり、様々な文物がもたらされた。
その結果ルネサンスが花開くのだが、
ビロードはその前段階で生み出されたものである。
そもそも絹は東方よりもたらされるものであったのだが、
絹をより美しく織る方法を模索する過程で
生み出されたのがビロードだったのだ。
フランス語ではベロアと呼ばれ、
本邦では天鵞絨、てんがじゅうの名前で広まった。
ポルトガル人によって持ち込まれた天鵞絨は、
当初染色されていない白い絹織物だった。
これを本邦では白鳥のようだとして、
天鵞、つまり白鳥の名を付けたようだ。
紛らわしいことに現代の本邦においては、
ベルベットもビロードもベロアも名前として使われている。
同じものが様々な名前で呼ばれるため、
多くの分野で混乱をもたらしていることは否めない。
更に、天鵞絨の天の字をとって、
毛羽立った織物の名にくっつける例がある。
代表的なものはコール天だろう。
コール天はコーデュロイのことなのだが、
コーデュロイについてはまた別の機会を設ける。
前述の別珍、ベルベッティーンとベルベットの違いも
曖昧な場合が多く、織物の名前というのは
なんとなくがまかり通る無法地帯と化している側面もある。
一応、分野によってはこれらの名前の違いを
細かな差異を示すために使い分けているようだが、
業界の専門用語である。
今回取り上げたベルベットは、
絹あるいはレーヨンでできた毛足の短い
毛羽立った織物であり、ビロードやベロア、
天鵞絨とも呼ばれると覚えておけばよいかもしれない。
絹製であり、手間のかかる製法で作られる関係上、
ベルベットは高級織物である。
絹のような滑らかさを指してベルベットを
形容詞として使う場合もあることも補足しておこう。